ブラインド A/B テストは、同じ音源の2つのバージョンを、どちらがどちらかを伏せて再生します。ラウドネスを揃え、両方から同じ短いパッセージをシャッフルした順で再生し、ラウンドごとに1つを選び、ファイル名は最後にだけ見ます。少なくとも10ラウンド行いましょう。10回中9回以上同じファイルを選ぶことは、当てずっぽうではまず起こりません(p ≈ 0.011)。
なぜブラインドで試すのか
どのファイルが新しいリビジョンか、高価なマスターか、ロスレスのファイルかを知っていると、良く聴こえるはずだと期待し、実際にそう聴こえがちです。普通のミックスの A/B 比較のように見ながら比べると、耳と期待を一緒に測ることになります。ブラインドテストはラベルを外すので、選ぶ手がかりは音だけになります。
ブラインドテストは、判断が際どいときや、間違えると高くつくときに手間をかける価値があります。2つのマスターの一方を承認するとき、プロジェクトの終盤に2つのミックスのリビジョンから選ぶとき、高ビットレートの MP3 を WAV の代わりに送ってよいか確かめるときなどです。
ブラインド A/B、ABX、ダブルブラインド
これらのテストは、違う問いに答えます。
- ブラインド A/B の好みのテスト。ラベルのない2つのバージョンを聴き、好きなほうを選びます。「名前が見えないとき、どちらが好きか」に答えます。
- ABX テスト。A と B を聴き、次にそのどちらかである未知の X を聴いて、X がどちらかを答えます。「そもそも違いが聴き取れるか」に答えます。ロスレスと非可逆の音源を比べるときの一般的なテストです。
- ダブルブラインドテスト。聴く人もテストを行う人も、どのファイルが鳴っているかを知りません。ファイルをシャッフルして名前を隠すソフトウェアを使えば、その場の誰もヒントを出せないので、テストはダブルブラインドになります。
好みのテストでは、違いが聴こえないことは証明できません。選択が半々に割れたなら、そのバージョンが同じに聴こえるか、同じくらい好きかのどちらかです。ミックスやマスタリングの判断では、問いはどちらを残すかなので、たいていそれで十分です。
ブラインド A/B テストの手順
- ラウドネスを揃える。各ファイルのインテグレーテッド LUFS を測り、大きいほうを静かなほうまで下げます。約 1 dB の差で選択は偏り、ブラインドテストでは大きいファイルがどれかもばれてしまいます。方法はレベルマッチのガイドで解説しています。
- ファイルの位置を揃える。各ラウンドで曲の同じ瞬間が鳴るように、両方のバージョンが同じサンプルから始まる必要があります。
- 短いパッセージを選ぶ。気になる区間の1、2フレーズで十分です。パッセージが長いと、音ではなく記憶を比べることになります。
- ラウンドごとにシャッフルする。2つのバージョンの順番はラウンドごとにランダムに変わる必要があります。そうしないと、パターンを覚えてしまいます。
- 何を判断するか決める。ボーカルのレベルや低域など、1つのテストで1つの点を選び、それだけを判断します。
- 名前は最後まで隠す。ラウンドの合間に結果を見ず、途中でヘッドフォンや音量を変えないようにします。
ABSeq のブラインドテストは、トラック A と B でこの手順を行います。各ラウンドでは両方から同じ短いパッセージがシャッフルして再生され、「バージョン A」「バージョン B」とラベルが付き、好きなほうを選びます。ラウンド数は1〜50、パッセージごとの秒数も設定でき、Auto Gain はデフォルトでオンで、ファイル名は結果にだけ表示されます。設定方法はヘルプガイドのブラインドテストの設定で解説しています。これは好みのテストで、ABX テストではありません。

必要なラウンド数
1ラウンドでは何もわかりません。バージョンが2つなら、当てずっぽうでも半分の確率でどちらかに当たるので、1回の選択はコイン投げと同じです。ラウンドを重ねると当てずっぽうは半分あたりに落ち着き、一貫した好みが浮かび上がります。
| ラウンド数 | 同じ選択の必要回数 | 当てずっぽうで起こる確率 |
|---|---|---|
| 10 | 9回以上 | 約 1.1%(p ≈ 0.011) |
| 16 | 12回以上 | 約 3.8%(p ≈ 0.038) |
同じ数値は、選択の代わりに正解数を数える ABX にも当てはまります。16回の ABX 試行で12回以上正解する確率は、当てずっぽうでは5%未満です。
ラウンドを増やすほど答えははっきりしますが、耳が疲れます。16回より多く必要なら、休憩を挟んで2回のセッションに分けましょう。
結果の読み方
- 10回中9回のような、はっきりした好み。違いが聴こえていて、一方のバージョンを好んでいます。そちらを残すか、何が良いのかを突き止めましょう。
- 10回中6回のような割れ。この環境では、どちらかを好むには差が小さすぎます。ファイルサイズやコストなど、ほかの理由で選びます。
- 負けると思っていたバージョンへのはっきりした好み。まずレベルが揃っているかを確かめます。レベルが同じなら、加えた変更がトラックを損ねたのかもしれません。
テストした環境を書き留めておきます。ヘッドフォンでの結果は車やスマホのスピーカーには当てはまらないので、際どい判断は別の環境でも繰り返しましょう。
ロスレスと MP3 や AAC のブラインドテスト
非可逆エンコードが聴き分けられるかを試すには、ロスレスのファイル(WAV や FLAC)と、同じマスターから作った MP3 や AAC を比べます。ほかのテストと同じように、ラウドネスを揃えて位置を確かめます。問いはどちらが好きかではなく違いが聴こえるかなので、ここでは ABX テストが一般的です。
先にマスターのトゥルーピークを確かめましょう。サンプルピークで 0 dBFS のマスターは 0 dBTP を超えるサンプル間ピークを持つことがあり、AAC や MP3 にエンコードするとクリップすることがあります。その場合、聴こえているのはコーデックではなくクリップかもしれません。違いはトゥルーピークのガイドで、ほかの形式の確認は2つのオーディオファイルを比較するガイドで解説しています。
よくある失敗
- レベルを揃えず、大きいファイルが勝つか正体がばれる。
- 3、4ラウンドだけ行って、その結果を最終的なものとみなす。
- 途中でスコアを見て、勝っていると思うバージョンを探しながら聴く。
- パッセージが長すぎて、それぞれの記憶を比べてしまう。
- 途中で音量やヘッドフォンを変える。
よくある質問
音のブラインド A/B テストとは?
ブラインド A/B テストは、同じ音源の2つのバージョンをどちらがどちらかを伏せて再生し、ラウンドごとに好きなほうを選ぶテストです。ファイル名は最後にだけ表示されるので、どのファイルが新しいか高価かではなく、音で選べます。
ABX テストと A/B テストの違いは?
A/B の好みのテストは、ラベルのない2つのバージョンのどちらが好きかを問います。ABX テストは A、B、未知の X を再生して X がどちらかを問うので、そもそも違いが聴き取れるかを試します。ロスレスと非可逆の音源を比べるときは ABX が一般的です。
ブラインドテストは何ラウンド必要ですか?
少なくとも10ラウンドです。10ラウンドで同じファイルを9回以上選ぶ確率は、当てずっぽうでは約 1.1% です。16ラウンドで12回以上なら約 3.8% です。1〜5ラウンドでは、本当の好みと運の区別がつきません。
ブラインドテストでロスレスの音は聴き分けられますか?
聴く人、音楽、エンコード、再生環境によるので、答えは自分のテストで出します。ラウドネスを揃え、ファイルの位置を合わせて ABX テストを行い、正解数を数えます。16回の試行で12回以上正解なら、当てずっぽうとは考えにくいでしょう。
音のダブルブラインドテストとは?
ダブルブラインドテストでは、聴く人もテストを行う人も、どのファイルが鳴っているかを知らないので、誰もうっかりヒントを出せません。ファイルをシャッフルし、名前を最後まで隠すソフトウェアなら、それだけでダブルブラインドテストになります。