LUFS は Loudness Units relative to Full Scale の略です。ITU-R BS.1770 という規格で定められ、EBU R128 はこれを土台にしています。LUFS メーターは耳の聴こえ方に合わせて音にフィルターをかけ、一定の時間でレベルを平均します。1 LU は 1 dB の変化なので、−10 LUFS のマスターは −14 LUFS のマスターより 4 dB 大きいことになります。

この値が大事なのは、配信サービスがこの値で音楽を再生するからです。Spotify はデフォルトでインテグレーテッド −14 LUFS で再生するので、−10 LUFS と測定されたマスターは 4 dB 下げられます。ピークメーターではそれはわかりません。LUFS メーターならわかります。

LUFS メーターが測るもの

LUFS メーターは、普通のレベルメーターにはない3つのことをします。

  1. 測る前に K 特性の重み付けをします。K 特性は、耳の聴こえ方に近づけるハイシェルフのブーストとローカットです。深い低音は小さく、上の帯域は少し大きく数えられます。
  2. 重み付けしたレベルを、測る値に応じて 400 ms、3秒、または曲全体の時間幅で平均します。
  3. 曲全体の値では、無音やとても静かな部分をゲートで除き、値が下がらないようにします。

「フルスケールに対する」とは、デジタルの上限を基準にするという意味です。実際の音楽はマイナスの値になります。静かなアコースティックのマスターなら −18 LUFS、密度が高く強くリミッティングしたマスターなら −8 LUFS くらいです。値が大きい(0 に近い)ほど音が大きいことを示します。

LUFS と dB の違い

デシベルは比です。基準がなければ意味を持たず、「dB」のあとの文字がその基準を示します。ピークメーターの dBFS は、ファイル内の最大のサンプルを示します。曲がどれだけ大きく聴こえるかは何も教えてくれません。

どちらも −1 dBFS でピークを打つ2つのマスターを考えます。片方は音数の少ないピアノ曲、もう片方はコンプレッションの効いたロックのミックスです。ピークメーターはどちらにも同じ値を示します。LUFS メーターなら、ピアノは −18 LUFS、ロックは −9 LUFS と示すかもしれません。その 9 LU の差は、聴こえる差と一致します。

それでも、変化量では LUFS と dB は一致します。フェーダーでトラックを 3 dB 下げると、LUFS の値も 3 LU 下がります。だから配信サービスは、インテグレーテッド LUFS を目標値と比べ、正確なゲインの変化量を計算できます。

クリップを防ぐには、今もピークレベルが大事です。いまの読み方は、サンプル間のピークも捉える dBTP のトゥルーピークです。dBTP と dBFS の違いや、−1 dBTP が一般的な上限である理由はトゥルーピークのガイドで解説しています。

LUFS と RMS の違い

RMS メーターは信号のレベルを平均しますが、すべての周波数を同じに扱い、ゲートもありません。同じレベルなら、耳にはボーカルのほうが大きく聴こえるのに、大きなサブベースのラインは RMS の値をボーカルと同じだけ押し上げます。長いフェードや無音のイントロは、RMS の平均を引き下げます。

LUFS はどちらの問題も解決します。K 特性は値に占める低域の割合を減らし、ゲートは無音を無視します。そのため、インテグレーテッド LUFS が同じ2曲は近い音量に聴こえます。RMS が同じ2曲では、そうならないことがよくあります。配信サービスや放送の規格が LUFS を使うのはこのためです。

インテグレーテッド、ショートターム、モーメンタリー

LUFS メーターには、たいてい3つの値が表示されます。同じものを違う時間幅で測った値です。メーターではよく I、S、M と表示され、「LUFS-I」や「LUFS M と LUFS S」と呼ばれるのはこれのことです。

値表示時間幅使いどころ
モーメンタリーM400 ms一打、一語、ドロップの瞬間の大きさを見る
ショートタームS3秒A メロとサビを比べる、曲の中でのラウドネスの動きを追う
インテグレーテッドI曲全体(ゲートあり)配信サービスが使う1つの値を得る

ゲートの仕組み

インテグレーテッドの値には2つのゲートを使います。絶対ゲートは −70 LUFS 未満をすべて除き、無音を取り除きます。次に相対ゲートが、ゲート前のレベルより 10 LU 以上低い部分を除き、とても静かな部分を取り除きます。

実際にはこうなります。曲の最後に20秒の無音を足すと、RMS の平均は下がります。インテグレーテッド LUFS は変わりません。絶対ゲートが無音を捨てるからです。

どの値を見るべきか

納品の目標値にはインテグレーテッドを使います。サービスが −14 LUFS と言うときは、トラック全体のインテグレーテッドラウドネスのことです。ショートタームとモーメンタリーは作業中に役立ちます。インテグレーテッドが −11 LUFS の曲で、サビがショートタームで −8 LUFS になることもあり、その差は曲の動きの一部です。

LU とラウドネスレンジ

LU は LUFS と対になる相対的な単位です。LUFS は絶対的なレベルで、LU は差です。LUFS メーターで「このマスターはリファレンスより 2 LU 大きい」と言えば、「2 dB 大きい」と同じ意味です。

ラウドネスレンジ(LRA)は LU で表し、曲の中でラウドネスがどれだけ変わるかを示します。静かな A メロと大きなサビがあるトラックは LRA が広く、最初から最後まで強くリミッティングしたマスターは狭くなります。LRA に唯一の正解はありません。リミッターを通ったあとに曲の動きがどれだけ残ったかを見るのに使いましょう。

LUFS の測定方法

書き出したファイルを最初から最後まで測り、インテグレーテッド LUFS とトゥルーピークを一緒に読みます。サビのループで測った値は、曲全体より大きくなります。スピーカーの音をマイクで拾って測ると、ファイルだけでなく部屋も測ることになります。

ABSeq は、読み込んだすべてのファイルでこれを行います。各トラックに、ITU-R BS.1770 と EBU R128 に準拠して測ったインテグレーテッド LUFS と、dBTP のトゥルーピークを表示します。Pro では、LUFS グラフが曲全体のショートタームラウドネスを −14 LUFS のラインと比べて描き、表示値は S、M、I を示します。手順は iPhone で LUFS を測定するガイドで順に説明しています。

値がわかったら、次はいくつにすべきかです。配信サービスごとの LUFS の目安に、Spotify、Apple Music、YouTube などの再生レベルをまとめています。目標値より大きいマスターが得をすることはありません。サービスに下げられ、静かなマスターと同じ音量で、残るダイナミックレンジが少ないまま再生されます。

2つのバージョンを比べるときも LUFS は大事です。耳は大きいバージョンを厚く明るく感じ、約 1 dB の差でも選択が偏ります。判断する前に、インテグレーテッド LUFS でバージョンを揃えましょう。方法はレベルマッチのガイドで解説しています。

よくある質問

LUFS とは何の意味ですか?

LUFS は Loudness Units relative to Full Scale の略です。ITU-R BS.1770 で定義され、EBU R128 で使われるラウドネスの単位です。メーターは、耳の聴こえ方に近づけるハイシェルフのブーストとローカットである K 特性をかけてから、時間でレベルを平均します。1 LU は 1 dB の変化に相当します。

LUFS と dB は同じですか?

違います。ピークメーターの dB は最大のサンプルを示し、曲がどれだけ大きく聴こえるかはほとんど示しません。LUFS は時間をかけて、聴こえる大きさを測ります。ただし変化量は一致します。トラックを 3 dB 下げれば、LUFS の値も 3 LU 下がります。

LUFS-I とは?

LUFS-I はインテグレーテッドラウドネスで、ゲートをかけた曲全体の平均です。絶対ゲートは −70 LUFS 未満を除き、相対ゲートはゲート前のレベルより 10 LU 以上低い部分を除くので、無音や静かな部分で値が下がりません。Spotify の −14 LUFS のような配信の目安は、インテグレーテッドラウドネスのことです。

LUFS M と LUFS S の違いは?

LUFS M はモーメンタリーラウドネスで、400 ms の時間幅で測るので、一打や一語の大きさを追います。LUFS S はショートタームラウドネスで、3秒の時間幅で測り、A メロとサビの比較がわかります。どちらも納品の目標値ではありません。目標にはインテグレーテッドラウドネスを使います。

インテグレーテッド LUFS とショートタームのどちらを見ればよいですか?

ミックス中は曲の中でラウドネスがどう動くかを見るためにショートタームを、最終バウンスではインテグレーテッドを確認します。インテグレーテッドが −11 LUFS の曲で、サビがショートタームで −8 LUFS になることもあります。配信サービスがトラックをどれだけ下げるかを決めるのは、インテグレーテッドの値だけです。