iPhone で曲のラウドネスを測るには、書き出したファイルを、ファイルを読み取って ITU-R BS.1770(EBU R128)に準拠して測る LUFS メーターに読み込みます。読むのは、曲全体のインテグレーテッド LUFS と dBTP のトゥルーピークの2つです。それをリリースするサービスと比べます。Spotify は −14 LUFS で再生し、ピークは −1 dBTP 以下を求めています。
このガイドでは、LUFS チェッカーに必要な表示、マイクでは正しい答えが出ない理由、数値の読み方を計算例つきで説明します。
LUFS チェッカーに必要な表示
LUFS メーター、チェッカー、アナライザーと呼ばれるものには、いろいろな意味があります。完成した曲なら、次の値を確かめましょう。
- ITU-R BS.1770 または EBU R128 に準拠したインテグレーテッド LUFS。配信サービスが使う曲全体の値です。K 特性とゲートが必要で、ゲートは −70 LUFS の絶対ゲートと、ゲート前のレベルより 10 LU 低い相対ゲートです。
- オーバーサンプリングで推定した dBTP のトゥルーピーク。BS.1770 は 4× オーバーサンプリングを使います。dBFS のサンプルピークでは、サンプル間のピークを見逃すことがあります。
- 曲の中でラウドネスがどう動くかを見たいなら、ショートターム(3秒)とモーメンタリー(400 ms)のラウドネス。
- WAV、AIFF、FLAC、MP3、AAC など、書き出す形式への対応。
メーターが「ラウドネス」の値を1つだけ表示し、どの規格に従っているかを示していなければ、その値を配信の目安と比べることはできません。インテグレーテッド、ショートターム、モーメンタリーの値は LUFS とは何かのガイドで詳しく解説しています。
マイクではなくファイルを測る
iPhone のマイクで聴き取るメーターは、部屋の音を測ります。値はスピーカー、その音量、距離、部屋で変わります。スピーカーの音量を上げると、ファイルは変わっていないのに値が上がります。
配信サービスは、アップロードしたファイルを測ります。サービスがどうするかを予測するには、そのファイルを測りましょう。ファイルを測るメーターなら、ヘッドフォンでも、スマホのスピーカーでも、音を消していても、毎回同じ値になります。
曲全体を測ることも大事です。インテグレーテッドの値は A メロ、ブレイクダウン、アウトロも平均するので、サビのループで測ると曲全体より大きい値になります。
ABSeq で曲の LUFS を測る方法
ABSeq は、読み込んだすべてのファイルを測り、結果をトラックのタイルに表示する iPhone と iPad のアプリです。ファイルは保存場所のまま読み込み、デバイスの中で解析するので、音楽がどこかにアップロードされることはありません。
- DAW から曲を書き出し、iCloud Drive などファイル App に保存します。AirDrop やメールで届いたファイルは、先にファイル App に保存します。
- ABSeq を開き、ファイルをトラックに読み込みます。WAV、AIFF、AIFC、CAF、FLAC、MP3、M4A、AAC を開けます。
- 「測定中」が終わるのを待ちます。タイルにインテグレーテッド LUFS と dBTP のトゥルーピークが表示されます。トゥルーピークは −1 dBTP を超えると赤くなります。
- 表示値をタップすると、Spotify、Apple Music、YouTube、Tidal、Amazon Music、Deezer がレベルをどれだけ変えるかがわかります。
- 曲全体のラウドネスを見るには、LUFS グラフ(Pro)を開きます。ショートタームラウドネスを −14 LUFS のラインと比べて描き、表示値はショートターム S、モーメンタリー M、インテグレーテッド I を示します。
最大4つのバージョンを読み込めば、ミックス、マスター、2つの別案を並べて測れます。Auto Gain がすべてのトラックを最も小さいトラックまで下げるので、ラウドネスを揃えて聴けます。タイルの各数値はヘルプのタイルの表示で説明しています。

結果の読み方
インテグレーテッドの値から、サービスが曲をどれだけ下げるかがわかります。自分の値からサービスの目安を引くと、変化量になります。
大きいマスター
インテグレーテッドで −9.2 LUFS、トゥルーピークで −0.3 dBTP のマスターです。
- Spotify は 4.8 dB 下げて −14 LUFS にします。
- 約 −16 LUFS の Apple Music は、約 6.8 dB 下げます。
- トゥルーピークは −1 dBTP を超えていて、マスターは −14 LUFS より大きいです。Spotify はそれほど大きいマスターには −2 dBTP を推奨しているので、このマスターは余裕が 1.7 dB 足りません。
音圧が得になることはありません。下げられたあとは、−14 LUFS のマスターと同じレベルで再生されます。ピークは直す必要があります。Spotify がその余裕を求めるのは、サービスがファイルを AAC、MP3、Ogg にエンコードするときに、サンプル間ピークがクリップしうるからです。直し方はトゥルーピークのガイドで解説しています。
静かなマスター
インテグレーテッドで −16.5 LUFS、トゥルーピークで −3.0 dBTP のマスターです。
- デフォルト設定の Spotify は、ピークが −1 dBTP に届くまで上げられます。それは 2 dB なので、−14.5 LUFS で再生され、ほかのトラックより 0.5 dB 小さくなります。
- YouTube は大きいトラックを下げるだけなので、−16.5 LUFS のまま再生され、−14 LUFS のトラックより約 2.5 dB 小さくなります。
- 約 −16 LUFS の Apple Music は、約 0.5 dB 下げます。
それでよいかどうかは、曲についての選択です。各サービスと、静かなトラックを上げるかどうかは配信サービスごとの LUFS の目安にまとめています。
ファイルを測るメーターの限界
ファイルを測るメーターが読むのは、完成したバウンスです。変更を確かめるには、新しいバウンスを書き出して読み込みます。値はファイルの時点のものです。
インテグレーテッドの値は1つの平均です。どちらも −12 LUFS の2つのマスターでも、片方が静かな A メロと大きいサビを持っていれば、瞬間ごとの大きさは違って聴こえます。その違いを見るには、曲全体のショートタームラウドネスや、ラウドネスレンジ(LRA)を見ます。
最後に、Spotify 以外のサービスの値は推定です。ルールをすべて公表しているのは Spotify だけです。Apple Music、YouTube、Tidal、Amazon Music、Deezer では、メーターが予測した値から 1 dB ほどずれることがあります。
よくある質問
iPhone で LUFS を測定できますか?
できます。書き出した曲をファイル App に保存し、ファイルを ITU-R BS.1770 に準拠して読み取るメーターに読み込みます。曲全体のインテグレーテッド LUFS と dBTP のトゥルーピークを読みます。マイクは使わないでください。マイクが測るのはファイルではなく、スピーカーと部屋です。
LUFS チェッカーには何が表示されるべきですか?
最低限、ITU-R BS.1770 または EBU R128 に準拠して測ったインテグレーテッド LUFS と、オーバーサンプリングによる dBTP のトゥルーピークです。ショートタームとモーメンタリーの値があると、曲の中でラウドネスがどう動くかがわかります。何の値か示されていないラウドネスの値は、配信の目安と比べられません。
曲のラウドネスを測るには?
書き出したファイル全体を LUFS メーターで測り、インテグレーテッドの値を読みます。インテグレーテッドで −9 LUFS の曲は Spotify の目安の −14 LUFS より 5 dB 大きいので、Spotify は 5 dB 下げます。同時にトゥルーピークも確かめ、−1 dBTP 以下に保ちます。
iPhone の音量で LUFS の値は変わりますか?
ファイルを測るメーターなら変わりません。ファイルのサンプルを読むので、どの音量でもどの出力でも値は同じです。マイクで聴き取るメーターは音量で値が変わるので、配信サービスがどうするかは予測できません。